◎「白澤計画」企画書◎
Ver.01

化野 燐

◎はじめに◎

 近年、あやしきものごとに対する人々の関心が高まってきています。小説やコミック、ゲーム等の各種メディアによる加速も手伝って、怪異・妖怪についての研究は、文化人類学や民俗学、国文学等の専門研究者だけでなく、わたしのような在野の愛好家までも巻き込み、緩やかにその裾野を広げつつあるようです。

 しかし、研究の基礎となるべき怪異・妖怪の資料は、現在までのところ体系的な整理がなされておらず、その全貌は必ずしも明らかになってはいないというのが実情でしょう。
 このため、妖怪について調べはじめた者は、過去に収集された膨大な資料の中から自分が必要とする情報を見つけ出すのに、とてつもない労力と時間を費やすことになります。
 また、そのような環境にあるためか、記事の孫引きもあたりまえのことになっていて、繰り返し行われる引用によって生じた誤情報が、訂正されないまま平然と流通しています。
 このままでは効率が悪いし、混乱も避けられません。
 さらなる研究の進展など、とても望めはしないでしょう。

 このような現状を改善し、先人が残してくれた貴重なデータを有効に活用するためには、その全国的な収集と整理を行い、誰もが基礎資料として利用することが出来るデータベースを構築することが必要だと思います。

 ところが、民俗誌や伝説集、市町村史等に収録された資料の量には膨大なものがあります。また、現地の人間でなければ確認が難しいマイナーな資料も、かなりの数が各地方に埋もれたままのはずです。現時点では概数の把握さえ出来ていませんが、数万件にのぼる情報の存在が予測されます。このデータベースの作成は個人的な作業で対応可能な限界を超えているのは明らかです。

 むかしなら、ここであきらめるか、ひとりで孤独に気長な作業を続けたのでしょうが、今はさいわいなことにネット上で愛好家間の連係が生まれつつあります。

 そこで、ネットを利用した有志の共同作業による資料集成とオンライン・データベースの構築を提案します。

◎プロジェクト名称◎

 怪異・妖怪資料の集成とデータベースの構築を目的としたこの計画の名称を「白澤計画」とします。
 「白澤」とは中国古代の王「黄帝」が全国巡行の時に捕えた伝説上の神獣の名である。人語を解するこの獣は、森羅万象に精通しており、11,520種の神獣・悪鬼に関する知識を有していたといわれています。かつてその知識をまとめた『白澤図』という妖怪百科が存在していたという伝説も知られています。

◎データベース「白澤經」◎

 この計画で作成するデータベースの名称を「白澤經」と仮称します。
 このデータベースは出典の著者名・出版年などの
書誌情報はもとより、記事本文、怪異・妖怪の名称、出没地、知覚者に認識された形態などの様々な属性を項目として入力し、それらが検索・相互参照可能なものにします。将来的には各データを分布図・年表ともリンクさせるつもりです。
 最終的には将来の研究の基礎となり得るものを作成することができるでしょう。
 記事本文については、著作権をはじめとする様々な課題をクリアする必要がありますが、典拠となった記事の原文をそのまま入力し公開することを目標としています。

◎計画の進行について◎

 作業量の予測さえつかない現状を考えれば、最初から完全なものを作成するのではなく、いくつかの段階を経て充実を図って行くのが妥当でしょう。以下の段階を踏んでいくつもりです。

・第一段階
 全国規模で入力対象となる資料のリストアップを行い、県別資料一覧表を作成します。

・第二段階 
 第一段階の簡易なデータベース
『白澤經・索引版』(仮)を作成・公開します。
 これは怪異・妖怪記事が掲載された図書の書誌情報、記事の件名、妖怪の名称(別名)、掲載ページ数をピックアップしたものとします。つまり索引版は
怪異・妖怪記事掲載図書の総索引なのです。
 この段階で公開されるのは、著作権法に触れない資料の所在情報のみとなるでしょう。
 また、あわせて完全版へ向けての仕様改良・諸手続きのための検討・調整を行います。

※なお、『白澤經』(仮)の基本仕様と「入力基準」の案 は既に化野が叩き台として準備済。データベースソフトは「Filemaker Pro Ver.5」を使用。現在、千数百件のデータを試験的に入力しているが、著作権法の問題をクリアするまでは公開日程は未定。

・第三段階以降
 完全版公開に向けての具体的な作業と諸手続き(詳細未定)。


◎計画参加者について◎

 一局集中型の情報収集をさけ、提供者がそのまま利用者である開かれた計画とするため、基本的には有志による非営利の共同作業を考えています。参加資格等は特に設けません。


◎おわりに◎

 この計画は、インターネットの普及によって連係し始めた妖怪愛好家が、本格的に連係するよい機会になるでしょう。また、計画推進にともなう資料収集や整理をはじめとする作業自体が、新たな愛好家の育つ場にもなるはずです。

 趣旨に賛同していただける妖怪好きの皆さんに、この計画への参加を呼びかけます。みんなで伝説の『白澤図』を現代に甦らせましょう。

                         (2001.07)

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