名前だけがわかっていて、どんな性格のモノなのかがわからない妖怪について調べる時に、まず最初に確認すべきなのがこれらの事典類だ。

 5-1. 
柳田國男監修・民俗学研究所編 1955〜56 『綜合日本民俗語彙』 平凡社
 5-2. 千葉幹夫        1995   
『全国妖怪事典』 小学館ライブラリー
 5-3. 村上健司        2000   
『妖怪事典』 毎日新聞社

 よほどマイナーなモノでなければ、この3つでまず確認できる。
 5-1は柳田國男が設けた民俗学研究所が、各地の民俗学者によって収集された語彙をまとめた5冊組の事典。衣食住から信仰まで、あらゆる民俗語彙が収められているため、妖怪に関する語の収録数は全体の数パーセントだが、それでも千数百の項目が妖怪や民間信仰に関わるものだ。
 古書店で入手しなければならないし高価。大きな図書館に行けばみつけられると思うので、無理して購入する必要はないと思う。

 5-2は大型文庫判でコンパクト。値段もお手ごろだ。1から妖怪関連の語彙だけを抜粋して県別に整理したものに、他の文献からピックアップした語彙が追加されている。1から抜粋された文章のなかには、原文と多少ニュアンスが変わっているものがある点には注意が必要。 

 5-3は5-1,2に収録されたものに加えて、さらに多数の文献から語彙をピックアップしている。佐藤清明氏や日野巌氏などの妖怪辞典、絵巻物や鳥山石燕が描いた妖怪までフォローし、出典もわかりやすく表示してあるのが嬉しい。5-2と比べると若干高価だが、手元に置いておくべき一冊。化野による本書のレビューはこちら
 
 5-4. 柴田宵曲 1961『随筆辞典』4 奇談異聞編
東京堂出版

 ここまでで紹介した3冊とはかなり異なるタイプの辞典だ。江戸時代の随筆集から怪異関連記事をそのまま抜き出し、索引をつけたもの。江戸怪談アンソロジー的なものに仕上がっている。索引が語彙ではなく、記事内容によっているので、特定の妖怪を調べるような使い方には不向き。
 なかなか入手しにくい随筆集からの記事も収録されているので貴重な一冊だ。3-3とあわせて、楽しみながら読むとよい。本書を手掛かりに、吉川弘文館の日本随筆大成等におさめられた江戸随筆まで読み進むもよし。
  5冊組の高価なものなので、どうしても書棚に欲しいというのでもでなければ、これも図書館で探すこと。



 以下は妖怪事典の歴史を知るうえでの参考まで。

 5-5. 佐藤清明     1935 『現行全国妖怪辞典』
中国民俗学会
 5-6. 日野巌・日野綏彦 1975 「日本妖怪変化語彙」『動物妖怪譚』
有明書房

 地方の民俗学会がガリ版擦りで出版した5-5の入手は、余程運が良くなければまず無理だろう。化野も本気で探しはじめてから入手までに1年以上を費やした稀覯書だ。Webcatで検索すると、本書を所蔵している大学もあるようだが・・・
 しかし、御安心を。主要な語彙は5-3に収録されている。
 実は・・・アダシノは本書の注釈付きの復刻版がつくれないだろうかと、記載された妖怪の考証と類例さがしの作業を気長に細々とやっている。ま、夢だけどね。

 5-6は大正15年刊行の『趣味研究動物妖怪譚』を復刻した有明書房版に付録としておさめられている。現在絶版の同書は古書店で探すしかないだろう。
 日野巌氏については、宮崎県民俗学会のサイトにとてもよい紹介記事があるので、こちらを参照のこと。
 日野氏と佐藤氏の間には交流があったので、本語彙集には5-5からも多くが採られている。また、古典からピックアップされた語が収録されているのも、5-3を予見させて面白い。ちよっと誤植(あるいは誤記)があるのが気になる。
 こちらも主な語彙は5-3に収録されているので、語彙集のためだけなら無理して入手しなくてもよいと思う。

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